インターネットの仕組みとは?データが世界を飛び交う驚きの旅路

インターネットネットワークIT基礎知識

「Wi-Fiにつないでいるだけなのに、なぜアメリカのサイトが見られるの?」そんな素朴な疑問、持ったことありませんか?実は、あなたがスマホで「検索」ボタンを押した瞬間、データは光の速さで海を越え、何十台ものコンピュータを経由して目的地に届いています。しかも、その旅路はわずか0.1秒。まるで魔法のようですが、そこには人類の知恵が詰まった精密な仕組みがあります。今回は「インターネットって結局なに?」という疑問を、具体例たっぷりで解き明かしていきましょう。

ヴィントン・サーフ

1943〜 / アメリカ

TCP/IPプロトコルの共同開発者、「インターネットの父」と呼ばれる

世界の海底ケーブル総延長約140万km(地球35周分)
日本〜アメリカ間のデータ到達時間約0.1秒(100ミリ秒)
1日に送受信されるメール数約3300億通(2023年)
TCP/IP誕生年1983年1月1日正式採用
IPv4アドレスの総数約43億個

そもそもインターネットとは?「巨大な道路網」のイメージで理解しよう

インターネットには中央管理者がおらず、世界中のネットワークが自主的につながり合っている

インターネットを一言で説明するなら「世界中のコンピュータをつなぐ巨大な道路網」です。ただし、この道路を走るのは車ではなく「データ」。そして道路標識の代わりに「プロトコル」というルールが存在します。面白いのは、インターネットには「中央管理者」がいないこと。東京都庁のような司令塔はなく、世界中のネットワークが自主的につながり合っているのです。これは1969年にアメリカ国防総省が始めた「ARPANET(アーパネット)」が起源。当時の目的は「核攻撃で一部が破壊されても通信が途絶えないネットワーク」を作ることでした。だから中央集権ではなく、分散型の設計になったのです。現在、世界には約5万の独立したネットワーク(AS:自律システム)が存在し、それらが相互接続することでインターネットを形成しています。あなたのスマホも、契約している通信会社のネットワークを通じて、この巨大な網の一部になっているわけです。日本だけでも約1億5000万台以上のデバイスがインターネットに接続されています(総務省、2023年)。

POINT

インターネット=世界中のコンピュータをつなぐ「中央管理者のいない道路網」。核攻撃にも耐える分散型設計が起源。

ARPANETからインターネットへ

1969年10月29日、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)からスタンフォード研究所へ世界初のパケット通信が行われました。送ろうとしたメッセージは「LOGIN」でしたが、「LO」を送った時点でシステムがクラッシュ。世界初のインターネット通信は、わずか2文字で終わったのです。

データの「小包化」パケット通信の天才的アイデア

4K動画1秒分は約1万個のパケットに分割され、0.1秒で届く

あなたがYouTubeで動画を見るとき、その映像データは丸ごと一気に届くわけではありません。実は「パケット」と呼ばれる小さな塊に分割されて送られています。これを「パケット通信」といいます。例えるなら、引っ越しの荷物を全部まとめて一台のトラックで運ぶのではなく、小さな段ボール箱に分けて複数の配送ルートで送るイメージです。なぜこんな面倒なことをするのか?理由は3つあります。第一に、回線を独占しないため。電話のように「一対一で回線を占有する」方式だと、他の人が使えません。パケット通信なら、隙間を縫って多くの人が同時に通信できます。第二に、一部が届かなくても再送できるため。もし大きなファイルを一括送信して途中でエラーが起きたら、最初からやり直しです。パケットなら欠けた部分だけ再送すればOK。第三に、最適ルートを柔軟に選べるため。渋滞している道路を避けて別ルートを通れるのです。ちなみに、1つのパケットの最大サイズは通常1500バイト程度。4K動画1秒分のデータは約15MB(1500万バイト)なので、約1万個のパケットに分割されて届いています。それが「0.1秒で届く」というのは、考えてみればすごいことです。

POINT

データは「パケット」という小包に分割→複数ルートで同時送信→届いた先で組み立て直す。これが高速通信の秘密。

パケットの中身をのぞいてみよう

各パケットには「ヘッダ」と「ペイロード」が含まれます。ヘッダは宛先住所や送り主、パケット番号などの情報。ペイロードが実際のデータ本体です。宅配便の伝票と中身の関係と同じですね。届いた先でパケット番号を見て、正しい順番に並べ替えて元のデータを復元します。

IPアドレスとドメイン名|インターネットの「住所システム」

「google.com」→DNSが「172.217.175.110」に翻訳→そこへデータを届ける

データを届けるには「届け先の住所」が必要です。インターネットの住所にあたるのが「IPアドレス」。例えば「172.217.175.110」のような数字の羅列です。これはGoogleのサーバーの住所の一つ。世界中のすべてのデバイスに、このような固有の番号が割り振られています。ただ、人間が「172.217.175.110」なんて覚えられませんよね。そこで登場するのが「ドメイン名」と「DNS(Domain Name System)」です。「google.com」と入力すると、DNSサーバーが「それは172.217.175.110のことですよ」と翻訳してくれます。電話帳で名前から電話番号を調べるのと同じ仕組みです。面白いエピソードがあります。1995年頃、まだドメイン名の価値が認識されていなかった時代、ある男性が「business.com」を15ドルで取得しました。それが1999年に750万ドル(約8億円)で売却されたのです。早い者勝ちで「一等地」を押さえた例ですね。現在、世界で登録されているドメイン名は約3億5000万件以上(2023年)。日本の「.jp」ドメインだけでも約170万件が使われています。

POINT

IPアドレス=インターネット上の住所(数字)。ドメイン名=人間が覚えやすい名前。DNSが両者を翻訳。

IPv4からIPv6へ:住所が足りない問題

従来のIPv4アドレスは約43億個。世界人口80億人、1人が複数デバイスを持つ時代には全然足りません。そこで登場したのがIPv6。なんと340澗(かん)個、つまり340兆の1兆倍の1兆倍のアドレスが使えます。地球上の砂粒一つひとつにアドレスを振っても余るレベルです。

海底ケーブル|99%のデータは海の底を通っている

国際通信の99%以上は衛星ではなく海底ケーブルを通っている

「データは衛星で飛んでいる」と思っていませんか?実は国際通信の99%以上は「海底ケーブル」を通っています。衛星通信は遅延が大きく(往復0.5秒以上)、容量も限られているため、メインは海底なのです。海底ケーブルの総延長は約140万km。地球を35周できる長さです。日本とアメリカを結ぶ「FASTER」ケーブルは2016年にGoogleなどが敷設。長さ約9000km、毎秒60テラビット(DVD約1万3000枚分)のデータを運べます。驚くのはケーブルの細さ。深海部分では直径わずか17mm程度、庭のホースより細いのです。中心に光ファイバー(髪の毛ほどの太さ)があり、それを銅線、絶縁体、鋼線で包んでいます。水深8000mの水圧にも耐える構造です。最大の敵は「サメ」。海底ケーブルが発する電磁波にサメが反応し、かじってしまうことがあります。そのため、最近のケーブルはサメ対策の被覆が施されています。2013年にはGoogleが正式に「サメ除けケーブル」の存在を認めました。また、船のいかりや漁船の網による損傷も多く、年間約100件以上の修理が世界中で行われています。

POINT

海底ケーブルは総延長140万km。直径17mmの細いケーブルが、毎秒数十テラビットのデータを運ぶ。敵はサメ。

日本は海底ケーブルの要所

日本は太平洋とアジアを結ぶ海底ケーブルのハブ(中継地点)です。千葉県南房総市には多くのケーブルが陸揚げされる「ケーブル銀座」があります。もし大地震でここが被害を受けると、日本のインターネット接続に深刻な影響が出る可能性があり、冗長化(別ルートの確保)が課題となっています。

ルーターとプロトコル|データを正しく届ける「交通整理」

TCP/IPが正式採用された1983年1月1日は「インターネットの誕生日」と呼ばれる

パケットが世界を旅するとき、途中で何十台もの「ルーター」を経由します。ルーターは「この宛先なら、次はあっちのルーターに送ろう」と瞬時に判断する、いわば交差点の信号機です。あなたの自宅にあるWi-Fiルーターも、小規模ながら同じ役割を果たしています。このルーター間の会話を成り立たせているのが「プロトコル」、つまり通信のルールです。最も重要なのが「TCP/IP」。1983年1月1日、ARPANETが正式にTCP/IPを採用した日は「インターネットの誕生日」とも呼ばれます。TCP(Transmission Control Protocol)は「データが確実に届いたか確認する」係。届かなければ再送を要求します。IP(Internet Protocol)は「宛先を見て、次にどこへ送るか決める」係。この2つが連携することで、信頼性の高い通信が実現しています。面白いのは、TCPを開発したヴィントン・サーフ氏が難聴であること。彼は「テキストでのコミュニケーションが発達したインターネットは、聴覚障害者にとっても革命だった」と語っています。技術が社会的障壁を下げた好例です。現在、インターネット上では1秒間に約5億通のメールが送受信されています。それがほぼ遅延なく届くのは、この緻密なプロトコルのおかげなのです。

POINT

ルーター=データの行き先を判断する信号機。TCP/IP=「確実に届ける」と「宛先を決める」の2つのルールの組み合わせ。

あなたのデータは何台のルーターを通る?

試しに「traceroute」というコマンドを使うと、自分のパソコンからWebサイトまでの経路がわかります。日本からアメリカのサイトへアクセスする場合、通常15〜20台のルーターを経由します。それでも0.1秒で届くのは、光の速さ(秒速約30万km)と、各ルーターの処理速度(ナノ秒単位)のおかげです。

まとめ

スマホで「検索」を押した瞬間、あなたのデータは小さなパケットに分割され、光ファイバーを通り、海底ケーブルを横断し、何十ものルーターを経由して目的地に届き、また同じ旅路を戻ってきます。その所要時間、わずか0.1秒。この仕組みを知ると、普段何気なく使っているインターネットがちょっと違って見えませんか?次にWi-Fiが遅いと感じたら、「今、私のデータは太平洋の底を旅しているのかも」と想像してみてください。

『インターネットを支えるプロトコル』村井純

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